アッランとマーチン
ため込んでいた仕事も何とか片付いたので
気になっていたバーにでも行ってみる。
場所は繁華街の少し外れにあり
バーにしては珍しく外から中が見える仕様になっている。
中を覗いたが店員や客の姿はなく
センスのいい家具やインテリアが並んでいる。
ちょっぴり店名の『Young』に違和感は感じるが、、、
初めての店に期待と緊張が入り混じる中、いざ入店。
店に入るとカウンターの奥から「いらっしゃいませ」の声と共に
全然ヤングではないNonヤングが現れた。
ヤングというよりギャングである。
看板に偽りありである。
髪は軽くウェービーなオールバック
でかめのサングラス
口ひげ&顎ひげ
褐色の肌
一言で例えるなら
もう皆様お気づきのマーチンである。
お好きな席にと言われ、貴方の膝の上でと一発かましてやろうかと思ったが
サングラスの奥の瞳がそれを許さない。
黙ってカウンターの一番奥に座ると、マーチンが注文を聞いてきた。
ズラリと並んだボトルから選ぶのも面倒なので
おすすめのウイスキーをストレートで3杯ほどお願いした。
するとマーチンは、めんどくさそうに味わいの好みを聞いてくる
女性とウイスキーは、ギャルよりチョイ熟女が好みだと伝えると
クスリともせず棚から1本選び私の前に置いた。
アッラン18年です。
聞き取れなかったふりをしてもう一度聞く
アッラン18年です。
これぐらいの間違いを指摘するほど野暮ではないが
前述のボケが受けなかった仕返しとばかりに
アッランではなくアランですよねと指摘する。
するとマーチン、なんとマーチン
客である私の目の前で人差し指を左右にブンブンやりながら
違う、そうじゃない、、って言うんですよ、、言ったんですよ。
しかもですよ、、
ここみてくださいRが一つ多いですよって
Rもそうだけど、あんたもカツオぐらい一言多いよって、、
言いたいところだがフネさん並みに人間出来てる私は
まぁまぁお父さんと、怒れる波平をなだめるごとく
私が悪うございましたと、、、、
まぁそこからは会話が弾むわけもなく
すすめられたウイスキーを足早に飲み干し会計を済ませ
帰り際にボトル棚をみると、、
聖美と書いてあるボトルネックをぶら下げたアッランがいた。